いわゆる舌痛症は、その殆どが亜鉛欠乏症と考えられ、亜鉛補充療法で治癒する
日付: 2009年4月16日
しかし、ヒトを全人的に診ていると、次第に、臨床の事実と合わない症例を続々と経験することとなった。
医療の現場では統計的数値である基準値を今でも、うっかり、正常値と考えている傾向がある。
医師の中には『血清亜鉛値が基準値内であるから、亜鉛欠乏症でない』と単純に否定する者もいるが、
そんなデジタル的思考では、亜鉛欠乏症の診断は出来ない。
2002年秋から2008年02月までの約5年間で、亜鉛補充療法著効例で且つ、データの揃った亜鉛欠乏確診症例257例の初診時血清亜鉛濃度の分布図である。
いわゆる基準値の最低値65μg/dLより高値に113例もの症例を認める。
この確診症例257例の初診時血清亜鉛濃度のヒストグラムから分布曲線を描くと、
Kolmogorov-Smirnovの有意確率.091で、平均値:62.3で、標準偏差:13.1の亜鉛欠乏症群の正規分布曲線となる。
赤の曲線は、25年余前の健常成人167名のSRLのデータより得られた
87.5μg/dL±11.2の正規分布曲線で、現在、一応、非亜鉛欠乏群の分布曲線と見なすと、
非亜鉛欠乏者の95%が、赤の矢印の65~110μg/dL間に分布していることとなる。
青の曲線は、257名の亜鉛欠乏症群の62.3μg/dL±13.1の分布曲線で、
青の矢印の36~89μg/dL間に亜鉛欠乏症群の95%が分布していることとなる。
それぞれ2σでは、65~89μg/dL間で多く重なり、3σでは症例数は少なくなるが、
重なる症例もあることになる。
平均値が約25μg/dLの差であるが、個々の症例では多少の違いがあろうが、
平均して、この程度個々の至適濃度から血清亜鉛値が低下すると欠乏症状が出現すると
云ってもよいのであろう。
青の亜鉛欠乏症群の分布曲線と赤の非亜鉛欠乏者の分布曲線に80μg/dLの
カットオフ値を設定すると、欠乏症群の91%が陽性となり、9%が偽陰性、
非欠乏群の25%が偽陽性となり、75%が陰性と判定されることとなる。
非欠乏群25%は多いようであるが、亜鉛欠乏疑い有症状者の診断では
この80μg/dLは大変に有効な数値と考えられる。
その集団での亜鉛欠乏者の割合が少ないであろう健診群の判定などでは、
非亜鉛欠乏者の25%を過剰診断にないよう注意する必要がある。