第18回日本褥瘡学会学術集会に参加して(Ⅳ)
日付: 2016年11月7日
【DESIGN-Rが褥瘡の局所療法のみならず全身療法も含めて、重症度と治療経過を数値化して評価出来るものならば、
[ ①現褥瘡学会の局所療法 ] と [ ①+亜鉛補充全身療法 ]とを、学会として比較検討をお願いしたい】
と思う。
キッと統計的に治癒期間の有意な短縮が出るものと思う。
世の中は何かと統計的に数値差を求めるEBM( Evidence-Based Medicine )の時代である。
本来、EBMはハッキリしたnarrative Evidenceのない薬剤や治療法に統計的な有意差が認められるかどうか検討するものと考えるが、私の提唱する褥瘡の亜鉛補充療法には、充分批判に耐え得るnarrative Evidenceと疫学的考察、創傷治癒に関する分子生物学的な亜鉛生物学の知見も揃え講演をしている積もりであるが、時々、講演の後にRCT( Randomized Controlled Trial )についての質問を受ける。
RCTとはいかないが、本褥瘡学会の様に、まだまだ、ほとんど亜鉛補充による全身療法なしで、今までの局所療法主流の施設が多い現状では、亜鉛補充療法の全身療法に適切な局所療法を加える施設と比較検討をするには、DESIGN-Rが有用でないかと思う。
DESIGN-Rは褥瘡の局所療法の経過評価には欠かせない素晴らしい評価法と思う。
しかし、
第18回日本褥瘡学会学術集会、第一日目の第5会場、<一般演題> 【優秀演題賞】の亜鉛に関する演題の二題について、その対象とした褥瘡の重症度を問う質問をされた方が居て、私は何となく違和感を覚えた。
考えてみると、2002年秋に、多彩な亜鉛欠乏症の存在に気が付き、褥瘡がその主要な疾患の一つと次第に判り、亜鉛補充の全身療法により、それまでの局所療法の様な ” 壊れやすい褥瘡 ” を、細やかな除圧法や種々複雑な軟膏療法で、褥瘡の治癒経過に応じて細かな気を配らずとも、大まかな除圧と局所処置で治癒可能であることを知ったので、同じ頃褥瘡学会がDESIGNの評価法を推奨していることは知っていたが、必要性を感じなかった。
本学会の数々の教育講演は、このDESIGNの評価法に基づく局所療法の集大成として、聞き応えのあるものであった。
また、学会長挨拶にある今回の学会のテーマ「深まる知識 広がる連携」にあるごとく、
“ 広がる連携 ” は確かに進んでいて、日本褥瘡学会の功績であると思う。
しかし、“ 深まる知識 ” では、
皮膚局所の問題から、皮膚及び皮下組織の代謝異常の全身問題へ発想の進展がない。
線維芽細胞の機能活性化が問題とされ、線維芽細胞増殖因子が製剤化され、スプレー剤として局所療法 に応用されている。
この知識が褥瘡表面の局所の薬剤として使用される発想に、私は問題ありと思うが、それでも何故、線維芽細胞の異常が生ずるのか?の疑問はないのだろうか?
コラーゲンや膠原繊維生成の基礎的知識の進歩・発展は、褥瘡学会の外の基礎の学会では、着々と進んでいる。それなのに褥瘡学会は、何故、その知識は局所にとどまっているのか?
多くの苦悩する褥瘡患者を抱え、数千人の看護師、介護士や連携する医療者達が、まだまだ、日頃の褥瘡治療の現場に多くの問題を抱え、学会に新しい知識を求め集まっている。
褥瘡の治癒、創傷治癒に、亜鉛が如何に重要な役割を果たしているかの、一褥瘡治癒症例の経過をあげておこう。
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2012年05月07日初診の、96歳女性である。
亜鉛補充療法により代謝状態が改善すれば、
低代謝状態の結果であった総タンパクやアルブミン値Hb値の改善はなくとも、褥瘡は治ってゆきます。
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亜鉛欠乏症のホームページ、第二ホームページ等をご訪問ください。
是非、現状の局所療法では充分でない症例に、亜鉛補充療法を追加してみていただきたい。
その上で、厳しい批判のご意見があれば、頂きたい。
何が問題か?知識を深めようと思う。
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