亜鉛欠乏症の症状 ~多彩な欠乏症状~ 確実なものから予測されるものまで

日付: 2019年10月30日

【記】
多彩な症状を示す亜鉛欠乏症は、その症状の多くが一般的な症状でもあるので、症状のみで亜鉛欠乏症と診断することはできない。
また、確かに一般的に、亜鉛欠乏(不足)時は健常時に比して低血清亜鉛濃度を示すが、個々人が、それぞれに、広範囲に分散する固有の至適血清亜鉛濃度を有する亜鉛の生物学的特性から、亜鉛欠乏症は血清亜鉛濃度の絶対値のみで診断をつけることも出来ない。
つまり、少数ではあっても、血清亜鉛濃度が50µg/dl レベルの低値でも、健常(非亜鉛欠乏)者であり得るし、100µg/dl レベルの高値であっても、亜鉛欠乏症であり得るからである。

 

そこで、多彩な亜鉛欠乏症状から亜鉛欠乏症を疑うことから診断・治療の第一歩が始まるので、本論文では、先ず、亜鉛欠乏症の多彩な症状・疾患に焦点をあてて、まとめて記載する。

【記】
亜鉛欠乏症の診断は、多彩な欠乏症状の一つ、または、複数の症状を含む臨床症状、全身状態、治療経過等などより、亜鉛欠乏症を疑うことから始まる。本論文は、主に多彩な症状・疾患について、まとめたものである。

【記】
亜鉛欠乏症は一般的症状でもあり得る多くの、多彩な欠乏症状・疾患があり、さらにまた、未知の症状・疾患も考えられるので、症状のみで欠乏症の診断はできない。また、稿を改めて詳述するが、血清亜鉛(値)濃度の絶対値でも診断は不可能である。亜鉛欠乏症の診断・治療は、①疑い症状と②血清亜鉛値の示す確率とで、欠乏症の可能性を判断し、亜鉛補充療法の試行による③血清亜鉛値などの初期の変動と④疑い症状等などの変化、及びその後の血清亜鉛値等の変遷・推移、そして⑤全身的な状態の変化をもあわせて総合的に行う。

亜鉛欠乏症は、未知の症状も含め、多くの医師が考えているよりも、はるかに多彩な欠乏症状を呈する。ただし、経験しただけでも、あまりに多彩な欠乏症状・欠乏疾患があり、さらに、合併頻度等などから亜鉛欠乏症状かと予測されるものや未知の症状を加えれば、より多くの多彩な欠乏症が存在する可能性がある。 どの様に分類・整理し、記載したら良いものか?迷わざるを得ない。

現状では、日常臨床でしばしば遭遇する主要な症状を、①味覚障害、②食欲不振、③舌痛症、④褥瘡、⑤皮膚症状・疾患として、⑥やや遭遇する頻度の少ない、その他の多彩な諸症状・諸疾患や亜鉛欠乏症かと予測されるものなどに分けて記載することとする。

【記】
たった一つの微量元素亜鉛の不足で、何故その様に、多彩な欠乏症状が生ずるのか?
亜鉛生物学の基礎的な知見は、現在急速に解明されつつある。しかし、まだまだ、詳細は不明のことばかりであるが、現在、判明している微量元素亜鉛の多彩な生体内機能を、大きく、Slideの◎の三点にまとめた。
酵素の活性には亜鉛を必要とし、その活性ポイントに亜鉛原子が入ると酵素活性が大きく活性化されるという亜鉛酵素300余も、もっと多くも存在すると言われており、さらにそれぞれの酵素の反応の場では、種々の生体内機能が複合して、多彩な生体現象を生ずるものと理解している。

【記】
さて、2002年秋、フトしたことから多くの医師か考えているよりも.はるかに多くの、多彩な亜鉛欠乏症の存在に気が付いた時、文献や成書で知られていた亜鉛欠乏症の症状・疾患である。それ等は動物実験や臨床の現場での諸経験などを通して、文献や成書に記載し、伝えられたものであるが、現時点で見ても、かなり多彩な症状・疾患が記載されている。
しかし、当時、日本の臨床の現場では、『味覚障害は亜鉛欠乏症である。』と一般的に知られていたが、人体にたった2~3gが含まれると言う微量元素亜鉛の欠乏症は、現代のような飽食の時代には、余程、特殊な場合を除いて、存在するはずはないと考えられ、その後も現在まで、まだまだ、一般臨床の場では、欠乏症はごく稀なものであると考えられている。

【記】
しかし、私共の診療所では、欠乏症の存在に気が付いた1~2年の間に、一般の診療所では経験できない、または証明することができない、例えば、夜盲症や精子の減少などの、斜文字で示した症状・疾患群等を除いて、図表のような多数の、多彩な亜鉛欠乏症状・疾患を経験し、さらに、別表でまとめて示す皮膚症状・皮膚疾患についても、褥瘡も含めて、実に多数で、多彩な症状・疾病を経験することとなった。

 

【亜鉛欠乏症には、実に、多彩な欠乏症状・欠乏疾患があるので、それぞれが併発することも多く、注意して追跡すると、芋づる式に欠乏症状・欠乏疾患を次々と知ることが出来た。今後も同様の手法で、未知の症状が発見されるであろう。】

 

①味覚障害は、砂を噛むようであると、全く味覚が失われた症例から、甘味、塩味、苦み、辛みなどばらばらに障害されたものや、蕎麦や蕎麦つゆの味がよく判らないとか、旨味の微妙な味が判らないもの等などの種々の程度・種類がある。カレーの味や味噌汁の塩味がばらばらで、料理になっていないと、本人以外の家人などの周りが気が付いて受診する様な症例も多い。しかし、主に冨田寛先生など日大耳鼻科グループが長年にわたり研究してきたものでもあり、詳細は成書に譲り、省略する。

 

味覚障害は単独で発症することもあるが、多くは、舌痛や口腔内違和感など、また、皮膚症状・皮膚病変等などの種々の亜鉛欠乏症状を合併して発症することが多い。また、これまでにアフタ性口内炎や口角炎などの他の亜鉛欠乏症の既往がある症例など、病状経過の問診なども注意すべきことである。なお、食欲不振と合併することも多いが、よく成書や論文で常識的に述べられている「味覚障害だから食欲がない」というのは間違いで、味覚障害と食欲不振の発症機序は別の様である。もちろん味覚障害では不味いであろうが、また、「腹が空けば、多少不味くてもヒトは食べる」ことも事実である。

 

臭覚障害は2例程訴えられ、経験している。味覚障害と同じく、十分に亜鉛欠乏で発症するものと考えるが、臭覚異常の検査方法にしっかりとした方法もなく、私共の様な一般の診療所では治療効果の経験・評価も十分でない。さらに、臭覚障害は味覚障害よりもその状況について、本人が自覚していないことが多く、ここでは、やはり省略する。

 

②食欲不振は、拒食にまで至る重度の食欲不振から、何時の頃からか原因の不明な食欲不振に悩む人、飽食の時代で空腹感がないとウッカリ思っていた人、元来小食とか少食であるが、本人にとって普通のことと思っていた人が、他の欠乏症状での亜鉛補充療法で初めて亜鉛欠乏による食欲不振であったと気が付く人等などと人様々である。兎に角、意外に多くの食欲不振が存在する。しばしば、入院中に食欲がなくなったとか、定かな原因が無いが、食べないからと胃瘻を造成された人等など、原病が治ったのに食欲不振の場合は、ほとんどが亜鉛欠乏症であることが多い。

 

兎に角、意識している・いないに関わらず食欲の不振者は一般に考えられているよりもはるかに多く、原因の定かでない食欲不振、特に、高齢者で歳のせいで食事が食べられない、腹がもたれると言うケースの多くは亜鉛欠乏によるもので、食べなくて平気の程度から拒食に至ものまである。

 

なお、食欲不振の発症機序には、摂食中枢への亜鉛の関与する急速な反応で、極短期に改善する例と消化管粘膜の再生や消化器系の酵素の活性化などによる、中長期に回復する例があり、いつの間にやら食事が進むようになったと気づく人が多い。
亜鉛欠乏による食欲中枢が関与する食欲不振は補充療法の初期の頃に、極短期間に劇的に改善を示すので、この改善の徴候は、しばしば他の欠乏症状で、亜鉛補充療法試行中、潜在的症状の改善として、診断や治療継続の判断に、しばしば有用である。

 

③舌痛症は。舌や口腔内の燃えるような痛みや耐えられない痛みとの訴えから舌尖の軽い痛みや舌背、舌側面など諸処のびりびり、ヒリヒリする痛み、熱いもの、辛いものなどが滲みるなどとの訴えがある。舌・口腔内に肉眼的異常所見を認めない「いわゆる舌痛症」は、一部の特殊なものを除いて、亜鉛欠乏症であると言える。
舌痛症も単独の発症のこともあるが、その多くは、食欲不振や口腔内や咽頭の違和感等などを合併することも多い。口腔内の苦み、渋み感からガサガサ感、ざらざら感、滑らかさの欠如や飲み込み難い感じ、口乾感等などと、種々の口腔内違和感の訴えがある。

 

また、しばしば、アフタ性口内炎、口角炎を合併することもあり、中には、難治とされている白斑症や口腔内扁平苔癬の肉眼的異常が合併することもある。特に、白斑症、口腔内扁平苔癬については、まだ症例数が少ないが、亜鉛欠乏症で、治癒の可能性が強く示唆される。是非、専門機関の追試を願う者である。巷の歯科・口腔医療界では、原因不明で、難治疾患とされているが、舌痛症と同じく、新たな視点で検討されるべきものと考える。尚、舌痛症では、辛いもの、しょっぱいもの等の刺激が問題のことが多く、酸っぱいものとして、昔は好きであった柑橘類をいつの間にか食べなくなったなど、問診及び経過追跡時のチェック項目として大切である。

 

『舌痛症は亜鉛欠乏症である』を別稿として、HPに公開しているが、是非、是非、歯科・口腔外科学会など口腔関係の学会の追試をお願いしたい。現在は、医科、歯科及び専門?の谷間に落ちて、どこからも相手にされず舌痛症難民となっている。

 

④褥瘡は、一部の特殊な褥瘡を除いて、ほとんどの褥瘡は亜鉛欠乏症によると言ってよい。これまで、褥瘡は臥床による慢性的圧迫による局所の血行障害が主たる発症要因(日本褥瘡学会など)とされてきたが、【亜鉛欠乏による代謝異常による皮膚の生成・維持の障害の皮膚の脆弱性が主要な原因である】と言える。慢性的圧迫による血行障害はもちろん重要なtriggerではあるが、主要因でないと言える。これは日本褥瘡学会に、是非、追試をお願いしたい。

 

皮膚病変の部でも触れるが、種々の亜鉛欠乏症状の皮膚状態が、褥瘡発症以前から発症時などにも、合併する。易発赤性、易表皮剥皮、表皮内出血、紫斑化、水疱形成、皮膚・表皮の非薄化、皮下組織の萎縮、易裂創性等など、明らかな表皮、皮膚の脆弱性がともなうことが多い。
褥瘡については本HPに、別稿にて、今後も、典型的症例を提示するが、『亜鉛欠乏症のホームページ』『学会への講演』等なども参照されたい。日本褥瘡学会、日本皮膚科学会等の追試をお願いしたい。

 

⑤皮膚症状は、次のSlideで。

【記】
多くの皮膚症状・皮膚疾患に亜鉛不足が何らかの関与をしていることが多い。
亜鉛補充療法のみで軽快・治癒するものも多数あるが、他の何らかの原因が+αとして、関与しているものもあると考える。ただ、褥瘡について徐々に明らかになったごとく、【健常な皮膚の生成・維持に亜鉛が大きく関与】しており、亜鉛欠乏による同様の機能の欠落が皮膚疾患の発症に大きく関わっているのではないかと考えている。

 

皮膚科の教科書に亜鉛欠乏症例として必ず記載されている腸性肢端皮膚炎は、筆者は経験したことがないが、ZIP4のトランスポーターの研究など含め、成書に譲る。
それ以外のSlideの皮膚症状・皮膚疾患は全例が軽快・治癒した訳ではないが、それぞれに充分の narrative Evidence のある軽快乃至は治癒症例を筆者は経験している。
亜鉛生物学、特に、分子生物学的手法を駆使して、亜鉛トランスポーター:ZIP9、ZIP10、ZIP13等など、免疫や皮膚の生成や維持等など皮膚との関係が基礎的に次々と明らかになっています。皮膚科医、日本臨床皮膚科学会等の関心に、追試等など、是非お願いしたいものと思う。

 

これらの中でも、日常臨床で、しばしば遭遇する症例で、現在、全てではないが、その大部分が、改善、軽快・治癒する可能性が高いものは、褥瘡や口角炎、大部分のアフタ性口内炎はもちろん老人性皮膚掻痒症、掌蹠膿疱症、高齢者の脆弱な皮膚(易発赤性、易表皮剥皮、表皮内出血、紫斑化、水疱形成、皮膚・表皮の非薄化、皮下組織の萎縮、易裂創性等など)等などである。

 

類天疱瘡様皮膚疾患、少数の類天疱瘡を除いて、高齢者の水疱性病変は多い。表皮内出血と表皮剥皮は水疱病変と一連のもので、加齢はもちろんであるが、その殆どは亜鉛欠乏による健常な皮膚の生成・維持障害と言えると考える。是非、皮膚科医の関心と追試を願いたい。

 

老人性皮膚掻痒症、いわゆる老人性皮膚掻痒症の大部分は、適切な亜鉛補充療法で数週から1、2ヶ月程度で、かゆみは軽快・治癒する。皮膚の乾燥傾向や皮膚の菲薄さ等の老人性の皮膚状態の改善はそれぞれによるが、その多くは年余を要し、完全とは言わないが軽快する。ただし、長期の追跡はないが、亜鉛補充療法初期に少数例であるが、より搔痒が憎悪する例があり、治療を中止したものがある。
掻爬痕のみが目立ち、特別の皮疹のない薬剤性の掻痒症で、中でもしばしば経験するのは高脂血症剤等などで目立つが、その殆どの主要因は亜鉛欠乏症と言ってよい。搔痒を主症状とするが、ぽつぽつとしこりが出現する痒疹は、局所のステロイドと併用となるが、やはり亜鉛欠乏がその基に存在するようである。
搔痒(かゆみ)、 慢性湿疹や急性皮膚炎の皮疹に伴う搔痒も、皮疹とは乖離して、先ず亜鉛補充療法で搔痒感が軽快する傾向が見られる。
『搔痒の発症機序と亜鉛の関与』について、是非、皮膚科医の検討を期待する。

 

掌蹠膿疱症、 掌蹠膿疱症は、軽度か、あまり反応しない症例も3~4例を経験したが、大部分の症例の殆んどが亜鉛補充療法で治癒する。しかし、長期間では再発もあり、多くは何らかの亜鉛維持療法が必要であると考える。また、典型的な水疱の発症はないが、手掌や足蹠の発赤と肥厚と搔痒、落屑を伴う掌蹠膿疱症の類似の疾患も、多くは亜鉛不足が関与している様で、亜鉛補充療法がよく反応する。
特殊な症例を除けば、健常な皮膚の生成・維持への亜鉛の機能によると思われる。亜鉛の関与のことも含めた、皮膚科医の追試、検討を願いたい症例である。

 

アトピー性皮膚炎 私共の診療所では殆ど診療した経験はないが、アトピー性皮膚の一次的原因は一応置いて、二次的原因であろうか、亜鉛欠乏による健常な皮膚の生成・維持の障害が大きなひとつの原因である可能性がある。別稿で劇的軽快の1例を示す。

 

尋常性乾癬、膿疱性乾癬や全身に広がる慢性湿疹様の皮疹も、一次か二次かは別にして、少なくとも健常な皮膚の生成・維持への亜鉛の関与がかなり大きいと考えられ、皮膚症状・皮膚疾患に対する亜鉛の関与に、是非、関心を持って検討して欲しいものと思う。

【記】
日常臨床でしばしば遭遇する主要な症状は、①味覚障害、②食欲不振、③舌痛症、④褥瘡、⑤皮膚疾患として、既述した。
⑥その他、亜鉛欠乏症と考えられるもの、亜鉛欠乏症の可能性が示唆されるもの等など、多彩な諸症状・諸疾患と亜鉛との関連が予測されるものなどについて記載することとする。

 

2002年秋、フトしたことから多くの医師か考えているよりも.はるかに多くの、多彩な亜鉛欠乏症の存在に気が付いた当時、既に文献や成書で知られていた亜鉛欠乏症の症状・疾患であるが、斜文字で示す性的発育遅延や精子減少、無月経などの生殖・繁殖に関係すること、発育遅延や異常については、動物実験や経験などより、近年は基礎的な知見の進歩・発展もあり文献・成書などで明らかにされている。また、身体内で他の組織と比較して亜鉛の組織内濃度が高い部位については、その意味について考慮すること、当然、必要と考える。

 

⑥-①生殖、繁殖について 米国では、亜鉛がセックス・ミネラルなどと呼ばれ、いわゆる精力についての関係も考えられているが、私共の診療所で、科学的、医学的に容易に証明できることではない。しかし、前立腺や精液に含まれる亜鉛の濃度を考えれば、また、近年の精液に含まれる精子数の減少の事実も考慮して、また、生命を次世代につなぐ亜鉛の基本的機能を考えれば、生殖について、特に現在、男性・女性の不妊については、その一部の原因としてかなりの可能性を考えておく必要があると予測する。不妊症の鑑別診断には大きく関わるものと考える。

 

⑥-②貧血 亜鉛欠乏についての貧血は、アスリートの貧血として有名であるが、筆者も数例、アスリートではないが、他の欠乏症状での亜鉛補充療法施行例で、亜鉛欠乏状態の改善に伴って、貧血がきれいに改善した症例を何例か経験している。基礎的にもその機序は確かなことで、貧血の鑑別診断として臨床的に注意し、検討されるべきことと考える。

 

⑥-③免疫低下 免疫低下による易感染性については、その可能性が考えられる症例はしばしばある。特に、感染を伴った褥瘡が亜鉛補充療法で、抗生物質の投与なしに感染が治まり、褥瘡が治癒することは一般的で、確かなことである。
WHOでは後進国の小児の肺炎予防に亜鉛の効果を認めていると聞くが、高齢者の誤嚥性肺炎の予防等などでも、単に免疫能のことだけでなく、食欲や元気さの改善も含め有効である可能性が大きい。基礎的にも亜鉛トランスポーターZIP9、ZIP10などのB細胞との関係も明らかになり、臨床的にも今後大きな関心を持たれてゆくことであろう。

 

⑥-④皮膚は、皮膚科関係については、腸性肢端皮膚炎の特殊なものや脱毛など、これまでその知見は比較的限られたものであったが、Slide6のごとく、褥瘡はじめ実に広範な欠乏症状が明らかになった。皮膚科学会では、まだまだ皮膚と亜鉛の関係の関心が薄いが、是非、関心を持って欲しいものと思う。

 

⑥-⑤下痢、特に器質的疾患を認めない長年続いた慢性の下痢傾向症例で、他の欠乏症状の補充療法中に、下痢が治まったとの報告が何例か経験している。亜鉛補充療法薬プロマックによる補充療法で、しばしば生ずるのは便秘の副作用であり、また、胃のもたれ感という腸管運動の機能不全症状は殆ど亜鉛補充療法で消失すること等など考えると、亜鉛の腸管の運動機能についても関心を持つ必要があるように思う。

 

⑥-⑥骨粗鬆症、リュウマチ様慢性疼痛、加齢黄斑変性症、花粉症、慢性疲労、精神発達障害 自閉症、記憶等と亜鉛との関係等など、日頃の臨床上に、さらに検討されるべきものと考えている。