第18回日本褥瘡学会学術集会に参加して(Ⅵ)
日付: 2016年12月15日
【論理的亜鉛補充療法及び維持療法と軽度な看護・介護処置で褥瘡予防が可能である】
日本褥瘡学会のポスターセッションには、かなり大きな皮膚欠損の生じた褥瘡や広範なポケット形成により開放創としたり、形成外科的手術が必要となったりした、進行症例の写真が展示されていた。
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褥瘡の治療の究極は、褥瘡を比較的軽症で発見・治療することや発症しないように予防することであると考える。日本褥瘡学会が発症原因の究明やそれらの身体的、社会的要因まで含めて、原因除去のための教育や周知活動等などの努力をされ、多職種が連携して、チームを組んで早期発見や予防のシステム化等に努力されてきていること、そして前理事長の教育講演にあったごとく、褥瘡の発症率の低下に寄与されてきたことには大いに敬意を表するものである。
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しかし、長野県や神奈川県での発症率の低下はそれのみで説明しうるものであろうか?
詳細なその地域の分析が必要であろうとも思う。
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さて、皮膚の栄養障害、特に、亜鉛欠乏による代謝障害による表皮・真皮・皮下組織の皮膚の脆弱さが褥瘡発症の主要因とすれば、これまでの『褥瘡と学会と亜鉛』のシリーズで述べてきたごとく、亜鉛補充療法で不足している亜鉛を補充して、脆弱な皮膚の状態を変えて、皮膚の健常な生成・維持の状態を回復すれば、多少の慢性的な圧迫による局所の血行障害が生じても、褥瘡は発症せず予防が可能となる筈である。
もちろん義足の潰瘍や巻き爪の潰瘍のように健常な皮膚でも潰瘍を生ずる過酷な圧迫は論外であるが、少なくとも、余りに頻回な体位の変換やシーツの捩れ等などあまりに細心な局所の予防処置や看護・介護処置をとらなくても褥瘡の発症を予防できるものと考える。
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さて、では、『亜鉛欠乏状態乃至は潜在的亜鉛欠乏状態をどうやって見つけるかである。』
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味覚障害や食欲不振や舌・口腔咽頭症状等などの多彩な亜鉛欠乏症・症状は【亜鉛欠乏症のホームページ】や【亜鉛欠乏症の第二ホームページ】などご訪問いただければと思うが、ここでは、皮膚症状に限って簡単に述べておく。
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大部分の老人性皮膚掻痒症(お年寄りで、乾燥肌傾向の皮疹がない掻痒)や類天疱瘡様の水疱、表皮内出血、ペロリと薄く剥皮する易剥皮、菲薄な皮膚(特に、手背などのテカテカと光る薄い皮膚)、柔らかな爪等などの多くは典型的な亜鉛欠乏の皮膚症状(表皮の)で、これ等は、しばしば褥瘡発症のかなり前から認められることが多く、また、急性に発症した褥瘡の周辺表皮に、しばしば、合併していることも観察されていよう。
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この表皮の症状の時期で、論理的亜鉛補充療法を開始しておくと、褥瘡は容易には発症しなくなる。
スライドを載せておく。
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また、褥瘡発症初期の論理的亜鉛補充療法開始にて、当然、褥瘡を短期間に治癒に導くことが出来る。
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その後現状では、亜鉛欠乏の原因が定かでない場合、維持療法に移行する。
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但し、まだ充分な指標を示せないが、亜鉛欠乏の予備力は個々人により異なり、必ずしも、維持療法を継続しなければ直ぐに亜鉛欠乏症状を発症するものではなく、皮膚症状はじめ、多彩な亜鉛欠乏症状の何らかの症状の出現に注意し、経過を観察することでもよい。
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その際、個々人の至適血清亜鉛濃度(個人の正常値)はそれぞれ異なるので、亜鉛欠乏症発症時は補充療法開始前に血清亜鉛値を測定することが、大変参考となり、重要である。
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また最近は、亜鉛とのキレート作用や亜鉛の吸収障害、排泄促進作用などのある薬剤の服用者、特に、多剤服用者の中には亜鉛欠乏患者または潜在的亜鉛欠乏者が多く、出来るだけそれらの可能性のある服用薬剤の中止や服用方法の変更など検討する必要がある。
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そのためにも血清亜鉛値の測定をし、追跡する論理的亜鉛補充療法が必要である。
発症初期の補充療法症例を載せる。
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